デスティネーション・ストア | File 045:ngumiti 蔵前(東京都・蔵前)
2024.07.05

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 045:ngumiti 蔵前(東京都・蔵前)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 045は、少し躊躇してしまいそうな入口を抜けると、きっと長く使い続けたくなる数々の手仕事品が店内で出迎えてくれる「ngumiti蔵前」。

Text Takaaki Miyake

圧倒的“デスティネーション感”

ngumiti 蔵前

人気エリアとしてジャンルを問わず、様々なお店が引き続きオープンしている蔵前エリア。今回の「ngumiti 蔵前」は蔵前駅から隅田川に架かる厩橋を渡った先、春日通からさらに一本裏通りへ入った路地裏に存在する。

ngumiti 蔵前

地図を見ながら目の前に辿り着いたとしても一度はそのまま通り過ぎてしまいそうな外観。真新しい扉をあえて取り替えたという、躙り口さながらの古めかしい入口はかなり印象的だ。そんなドアを潜って2階へ続く階段を登ると、店主の藍田留美子さんが選び抜いた、温もりを感じさせてくれる器や洋服、古道具や箒などのアイテムが店内には並ぶ。

始まりは籠バッグから

ngumiti 蔵前

2024年2月にオープンした「ngumiti 蔵前」のストーリーは元々、あるブランドのショールームを担う役割という構想から始まったという。

ngumiti 蔵前

そのブランドというのが藍田さんのパートナーが手がける、鎌倉を拠点に山葡萄籠を制作する 喜利具 だ。山葡萄籠は素材自体も希少かつ編む作業にも長時間を要する反面、耐久性と使えば使うほどに味が出ることから“100年籠”呼ばれ、熱狂的なファンも多いという。

「実は鎌倉にもアトリエはあるのですが、『東京でも見たい』という声をよくいただいていました。ちょうど昨年にご縁があって今のスペースをご紹介いただき、『静かな環境だし、この物件ならイメージできるかも』と思ったのがきっかけです。ですが山葡萄籠は数をたくさん作れるわけではないので、せっかくだったら自分の好きなモノも一緒に見せようと決めました」

鎌倉を切り取り、東京・蔵前へ

ngumiti 蔵前

そんな「ngumiti 蔵前」には、現在20を超える作家やブランドによる、決して大量生産では作ることのできない魅力に溢れる品々が顔を覗かせる。その多くは藍田さんが実際に鎌倉で生活する中で出会ったアーティストによるもので、セレクトは飽きずに長く愛されることが一つの視点となっている。

「まずは周りにいる鎌倉のアーティストを紹介したい想いが強いです。いわば私たちが好きな鎌倉の部分を切り取って、東京の蔵前へ持ってきた感覚です。ですが単に作品を紹介するだけではなく、普段は表に出てないモノづくりの背景や実情も写真や文章で伝えていく責任は感じています。そのためにも場所がどこであっても、取り扱い前には取材へ行くんです」

人が集まり、新たな発見を

ngumiti 蔵前

「今後はモノを売らなくても成立する場所にしていきたいです。なのでオープンから継続して金継ぎや鎌倉彫り、柿渋や藍染などの様々なワークショップを開催しています。そうすると自然と人が集まって、新しい発見にも繋がっていくと思うんです」

中でも山葡萄のサコッシュ作りは月に一度必ず開かれ、毎回全ての予約が埋まるほどの人気ぶり。本来は和服に合わせる籠バッグだが、若い世代に知ってほしいという想いからこのワークショップを始めたという。

ngumiti 蔵前

「昔からの山葡萄籠の作り手や愛用者からは、ハンドルの付け方が一つ違うだけで指摘されることもありますが、新しい世代の使い手がいないと、知られる前に素晴らしい職人さんもいなくなってしまう。廃らせずに技術を継承するためには、時代と調和するアップデートも必要だと思っています。

極端な話をすると、なくても困りはしません。ですが『途絶えさせて良いのか』という一抹の不安を持っています。実際ワークショップには若い方の参加も多く、今後も山葡萄籠に限らず『持っていて楽しい』や『使ってみたい』と思ってもらえるモノづくりを発信していきたいですね。同時に若い世代の作り手も紹介していけたらと考えています」

モノで溢れ返る現代だからこそ、今一度目利きの重要さやモノづくりの大切さを「ngumiti 蔵前」でじっくりと感じてみてほしい。

DESTINATION STORES | File 45
ヌグミティ クラマエ | ngumiti 蔵前
東京都墨田区本所1-23-3 2F
営業時間:11:00〜17:00
定休日:火・水・木曜日
https://www.instagram.com/ngumiti_kuramae/