デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 061:TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム(東京都・東久留米)
スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 061は東京・東久留米市まで少し足を伸ばして訪れた、何でもアリの改造屋「TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム」。
Text Takaaki Miyake
ようこそ、改造の世界へ
今回のデスティネーションストア企画では東京23区から抜け出し、西東京に位置する西武池袋線の東久留米駅に降り立った。駅から住宅街を歩くこと10分、辿り着いたその場所は、一見すると周辺の住宅と何ら変わりないが、一度扉を開くと一体どれに注目すれば良いのか分からないほど混乱を極めた光景が広がる。
この一つ一つが強烈な個性を纏う家具やアートワークは、店主であり“改造スペシャリスト”である久山“ドナルド”宗成さんの手によって生み出された改造品だ。しかもその全てが商品でもあるというから驚き。
2025年2月22日(土)にオープンするこの謎多き「TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム」だが、実は外苑前にある「ワタリウム美術館」のミュージアムショップ「ON SUNDAYS」の中の狭小空間で10年にわたって活動を続けてきた。
ドナルドさんはそこでタイプライターのキーボードや秘密結社のアンティークパーツを使ったリングや時計、スマートフォンケースなど、ありとあらゆるプロダクトを改造。
さらにデザインがとにかく奇抜であったり、「いつ使うの?」と聞きたくなるような機能付きのデジタル時計、通称“GEEK WATCH(ギークウォッチ)”を集めて独自のジャンルも開拓してきた。
ジョン・ケージの言葉に導かれて
そんな中、根強いファンも数多く通った「ワタリウム美術館」内の拠点も今年1月で営業を終了。名前を新たに「TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム」として、移転を機にここから第2章をスタートしていく。
3年ほどかけて改造した一軒家の店内には、引き続きジュエリーやGEEK WATCHたちも並ぶが、新天地で改造するのはなにも手に取れる物質だけに限らない。
「『ON SUNDAYS』でお店を10年以上も続けると、頭の中でイメージさえできれば具現化できるようになってきました。残りの人生を考えた時、今まで培ってきた改造の技を色々な人の役に立てるため、社会と接続させようと思ったんです。
そこで現代音楽家のジョン・ケージの言葉が目に止まったんです。『芸術を"自己表現"ではなく、"自己改造"として捉える』。
このフレーズにインスパイアされたことが、場所を移してまでも再出発を決意した最大の理由です。なのでここでは生活や環境さえも改造してしまう実験場、そんな皆んなが集まれる集会所のような場所にしていきたいと思って作りました」
ドナルドと久山の関係性
「自分が想像する通りに世界は創造出来る」を意味する”アブラカダブラ”をモットーに掲げる「TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム」では、ジュエリーや腕時計、ガラスやネオン、スピーカーやインテリア以外にも、ありとあらゆる無理難題の改造依頼に今後は挑んでいく。
まるで漫画や映画に出てきそうなお店だが、実現性を高めるのは久山さんのこれまでのキャリアや人脈があってこそだ。
「元々は雑誌の編集者として仕事をしていたんです。実際にプロダクトを改造する場合は、アーティストや職人気質のドナルドが手を動かしていましたが、今後はより編集者としての感覚を持っている久山の出番が増えると思います。
その中でドナルドとしての自分に仕事を振ることもありそうですが、アイデアを形にしてくれる他のアーティストや仲間達もいるので、今後はプロダクトの枠を超えた色々な枠組みや環境すらも改造していく予定です」
広がる改造の領域
そんな久山さんの新たな活動はすでにスタートしており、現在複数の改造プロジェクトが着実に進んでいるという。
「例えば海洋プラスチックから建材を作る技術を開発した会社との取り組みがあります。その再生プラスチックからスピーカーを作ったり、イベント化できないかを模索中です。
他にも幼稚園と協力して、不登校の子たちに体験型のワークショップを提案していこうと思っています。それを現代アーティストたちが手を挙げて一緒にやりたいと言ってくれるから面白いですよね。
そんなことを仲間たちとやっていると、よく『秘密結社みたい』って言われるけど、自分たちでは「秘密じゃない改造結社」と呼んでいて。せっかく社会を良くできる改造方法があるなら、学んできたことを今後オープンソース化していくつもりです」
「TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム」にかかれば、小さなことから大きなことまで、本当にアブラカタブラの精神でなんでも解決してくれそうだ。
今のところは住所非公開かつ完全予約制らしいので、まずは依頼の相談をInstagramのDMから送ってみよう。
DESTINATION STORES | File 61
ティンカーズモデルルーム カイゾウモデルルーム | TINKER’S MODEL ROOM 改造モデルルーム
住所:非公開
https://www.instagram.com/abracadabra_oms