デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 063:山荘 飯島(東京都・経堂)
スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 063は小田急線・経堂駅の北口を出た先、鈴蘭通りを約1km進むと辿り着くファッションとアウトドアのお店「山荘 飯島」。
Text Takaaki Miyake
ファッションでも、アウトドアでもない
長年にわたって互いの長所を独自に解釈しながら成長を続けてきた、ファッションとアウトドアカルチャーの関係性。現代ではその境界線がよりシームレス化しつつあり、そんな時代から求められるようにして誕生したのが登山用品店「山荘 飯島」だ。
正真正銘の登山愛好家が集うストイックさが漂う店名だが、店内にはオーナーの田窪朗さんがセレクトする、機能面だけでなくデザイン性にも優れたアイテムが並ぶ。
そうなるとココは「ファッションのお店なのか?登山の専門店なのか?」という疑問が浮かんでくるが、答えはどちらも不正解であり、正解である。「山荘 飯島」は山と街との行き来を自由にする、いわば“山街両用”の新ジャンルを開拓したセレクトショップなのだ。
2021年9月のオープンから着実にファンを増やし、アウトドアラバーだけではなくフォトグラファーやビデオグラファーたちが、ロケ着を探しに足を運ぶことも少なくないという。
下山してきた高機能素材
幼少期は自然が身近な環境で過ごし、生地の商社やアパレルの生産などで経験を積んできたという田窪さん。上京後もキャンプや登山が日常にある生活を続ける中で、山と街を繋ぐ“あること”に気が付いたと教えてくれた。
「山で流行った機能的な素材が、5年ほど経つと展示会やお店に並ぶことが多かったんです。例えばウールのTシャツやPOLARTECのフリースも、アウトドアや登山のシーンではファッションよりも早く使われている印象でした。
逆にファッションブランドのアイテムでも、『コレだったら山でも着られる』っていう目線での選び方もしています」
登山とファッションへの深い理解から生まれた同店では、“山着”の機能や素材を落とし込んだアイテムをいち早くセレクトし、ファッション的な視点をプラスしたキュレーションをしている。
本来の山着と街着
実はファッションブランドが謳う“山着”が、実際のフィールドで着るとオーバースペックな場合も珍しくない。
「最近では防水・撥水性がフィーチャーされがちですが、速乾性やベンチレーションの方が望まれることも多いんです」
こうした経験をもとに、本来の意味で山と街を繋ぐウェアやギアが揃う「山荘 飯島」には、DIGAWEL(ディガウェル)や 迷迭香(マンネンロウ)、comm.arch(コムアーチ)や STATIC(スタティック)、Rab(ラブ)といったファッションとアウトドアのブランドが一つの空間に同居する。
また田窪さんが山で得た知見を素材やデザインに反映した、BAL(バル)との“山別注”も人気を呼ぶ理由の一つだ。
トラッドを崩したオーダーシャツ
さらに「山荘 飯島」では登山洋品店ながらオリジナルシャツのオーダーが可能で、ここにも強いこだわりが込められている。
「昔ながらのオーダーシャツ屋だと、正統派のシャツ以外は認めない風潮がありますが、良い意味でそこを崩せるんです。例えば襟は8cmのフルロールより短く、センターボックスはサイドタックに変更するなど、動きやすさを重視した提案をしています」
トラッドの常識にとらわれない“山シャツ”だが、ドレスシャツの工房で縫製されるため、そのクオリティはお墨付き。他にもダイニーマ素材で作ったトートバッグやアルファダイレクト素材のベストなど、登山以外のアウトドアシーンでも活躍するオリジナルアイテムも見逃せない。
なおアポイント次第では4:00〜23:00で対応してくれる、急な登山の駆け込み寺としても心強い存在だ。
DESTINATION STORES | File 63
サンソウイイジマ | 山荘 飯島
住所:東京都世田谷区船橋5-20-14 パル千歳1C
営業時間:12:00〜19:00
定休日:不定休
https://sanso-iijima.com/
https://www.instagram.com/sanso_iijima/