JOURNALIST’S EYE #2 COGNOMEN
2022.02.24

次の御三家の座を狙う、20代のジャパン・ブランド5選




Text Kaijiro Masuda(Fashion Journalist)


コロナ禍前は年間250本以上のファッションショーを取材し、数えきれないほどの展示会を長年にわたって見続けているファッションジャーナリストの増田海治郎。彼が「いま知っておくべき日本ブランド」をピックアップしてお届けする不定期連載。「次の御三家の座を狙う、20代のジャパン・ブランド」について5回にわたってお届けする。今回はCOGNOMEN(コグノーメン)。

サッカーとイギリスとモードを結びつける期待の新人

以前から思っていたのだが、日本のファッション業界にはサッカー経験者が異常に多い。Jリーグ草創期のスター選手だったWACKO MARIAの森敦彦は言うまでもなく、デザイナー、プレス関係者には本格的にサッカーに取り組んでいた、もしくは現役でフットサルや草サッカーを楽しんでいる人がたくさんいる。でも、サッカーをファッションに落とし込んだブランドとなると、SOPH.のF.C.R.B.を除けば、不思議と思い浮かばなくなる。

視点を世界に広げても、イギリスの90年代のフーリガンやサッカーユニフォームをコレクションに取り入れたKochéを除けば、サッカーの要素を取り入れたストリートファッションやブランドは決して多くない。世界でもっとも競技人口が多いスポーツはバスケットボールで約4億5000万人。サッカーは2位の2億5000万人でバスケに次ぐ存在なのだが、ことファッションにおける取り上げられ方の差は競技人口差以上に大きい気がする。

COG NOMENの大江マイケル仁も、幼少期から夢中になってサッカーに取り組んできた。学生時代はヴィッセル神戸に所属する武藤嘉紀と対戦していたというから、きっとプロを目指してボールを蹴っていたのだろう。ほとんどのサッカー少年は、高校卒業時か大学卒業時にプロへの道を諦めることになる。それはとても辛い経験になるはずだが、文化服装学院への進学を決めた時に大江もその決断を下したのだろう。でも彼はその頃から違う形でサッカーと関わろうと決めていたのかもしれない。

COGNOMENというブランド名は、ラテン語で「三番目の名前、愛称」を意味する。「過去の出会いと現在の出会いから新たな人間像を創造し、愛称をつけたくなるようなモノづくりを目指す」のがコンセプト。過去の出会いを振り返ると、大江にとってサッカーと母の母国であるイギリスは欠かせない要素だったのだろう。そのふたつの要素と現在進行形で影響を受けているものを融合させたのが、COGNOMENの服なのだ。

2022SSのテーマは交差、交差点を意味する“INTERSECTION”。全体的な印象としてはこれまでよりモード感が増していて、ジェンダーレスな匂いや色気のようなものが色濃く出てきた印象を受けた。目の錯覚を起こすペイズリー柄のニットベスト、MA-1風のニットトップス、完全防水のテックニットなど、得意のニット類も充実。

サッカーの要素では、デビュー以来かならず作っている小学校時代の背番号「11」が背中に描かれたカットソー、サッカーユニフォームのスリーブを採用したコックジャケットがある。いよいよトレンドに浮上しそうな90年代的なパンツ見せの腰穿きのスタイリングは、なんとなく大江のきっとヤンチャだった高校時代を想像してしまった。

まだ4シーズン目だが、将来的にはなるべく早くショー形式で発表したいというから頼もしい。卸先も順調に増えていて、NUBIANやst companyなどの有力ショップも既に名を連ねている。個人的は早い段階でスポーツブランドとのコラボレーションを見たいと思っている。そしてファーストショーはぜひサッカー場でやってほしいな!

Designer Profile

大江マイケル仁。1992年、東京出身。幼少時からサッカーに夢中になる。2015年に文化服装学院卒業。日本のファッションブランドでニットを中心とした商品企画を担当し、2019年にフリーランスとして独立。2020-21AWからCOGNOMENをスタート。

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