BEHIND THE PRODUCT #11
2022.06.06

ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線と深いプロダクト愛でお届けする好評連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無人に語ります。今回も5つのブランドから気になる最旬アイテムをピックアップ!




Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu


NEAT

ウールギャバジンエンブロイダリー

“ウールのスラックスに刺繍はあんまりないですね”(来田)

来田拓也(以下 R):NEATは元々Brooks Brothersの広報だった西野(大士)さんが始めた、スラックスブランドです。この刺繍は西野さんがアメリカを旅されたときに、ご自身で撮られた人物写真をモチーフにしたエンブロイダリースラックスになってます。

武井幸久(以下 T):西野さんはGraphpaperの南(貴之)さんとTapWaterっていうパンツブランドもやってますね。

渡邊敦男(以下 W):本格派、いうなれば“パンツのプロ”って感じだね。

R:そうですね、NEATも「パンツだけはキレイに穿きましょう」みたいなコンセプトでしたし。

T:パンツの丈を調整して穿くようなタックパンツが少なくなってる中で、びっくりするぐらい調子が良いっていうのは聞きました。

W:昨今のダボっとしたスラックスのトレンドにも、NEATは多大な影響を与えている。でも、無地の印象だったから、この刺繍は見たことなかったな。

R:NEATでもこういったデザインは珍しいみたいで、コーデュロイパンツだとよく見ますけど、ウールのスラックスに刺繍はあんまりないですもんね。

T:普通だとシワが出ちゃいそうだけど、刺繍がベルトループのところまで入ってる。なかなか他のブランドがならなそうなことをやってますよね。

R:こっちはミリタリーのグルカショーツをベースに作られた、少し不思議な感じのアイテムです。

T:ショーツなのにタックが入ってるから、きちんとして見えるね。

R:僕もスラックス一本持ってるんですけど、上品で、穿くと背筋が伸びる感じがするブランドだなと。

2015年に誕生したパンツ専業ブランド 、NEATの新作。 デザイナーの西野さんがアメリカに行ったときに現地の人を撮影した“アメリカおじさん”をモチーフに、あえてベーシックなウールギャバジン生地に刺繍したパンツ。

NEAT
ワイドウールギャバジンエンブロイダリーテーパード ¥49,500、グルカショーツ ¥44,000(にしのや)
TEL:03-6434-0983



HEUGN

ニューレギュラーシャツ

スーツを着ないで仕事ができる僕らみたいな職種の人間にピッタリかも”(渡邊)

W:キレイなシャツだね。

R:サイジングにこだわっているらしくて、単にビッグシルエットではない、タックインしたときもシルエットがキレイに見えるようにデザインされてます。大人な感じの洋服ですよね。

T:素材も良いものを使ってそうだな。

W:5年ぐらいはやってるよね? どこで買えるの?

R:UNITED ARROWS、L’ECHOPPEみたいな大手のセレクトショップです。

T:しかし3万5千円のシャツが普通に売れているってすごいよね。特にドレスシャツじゃない、こういったカジュアルなアイテムが。

W:トレンドに左右されないデザインだから、ストライプのシャツが欲しかったら良いかもしれないですね。スーツを着ないで仕事ができる僕らみたいな職種の人間にピッタリかも。

R:30代くらいのアパレル業界じゃない洋服好きの人とか、コアなファンが多いらしいです。

W:値段も含めて大人の洋服ですね。

ミニマルなデザインの中にも、シルエットや素材使いによって人気が高まっているHEUGN。シャツはブランドの中でもメインアイテムのひとつで、ドレスライクな雰囲気とカジュアルな雰囲気のミックス感が見事。

HEUGN
Shirts Alan ¥38,500(イデアス)
TEL:03-6869-4279




TANAKA

プリントTシャツ

“今の日本のファッションの流れとは違った、絶妙なモード感を取り入れたコレクションブランド”(渡邊)

R:Yohji YamamotoとかUNIQLOで経験を積まれた女性デザイナーの方が、ニューヨークを拠点に5年前ぐらいにスタートしたブランドです。今回はTシャツを選んだんですが、デニムとかベーシックな洋服作りに定評があってセンスの光るアイテムが多くて。

T:まず何よりブランド名が面白いですよね。めっちゃストレート。日本では非常に一般的な名前だし。

R:今シーズンもさらに取り扱い店舗が増えていて、来シーズンはどんどん広がりそうな気がします。

W:海外での取り扱いはあるの?

R:今までの取り扱いは海外がメインだったようですが、最近はここも大手のセレクトショップで見かけます。

T:コレ近くで見るとすっごく良いですね。プリントかと思いきや、写真の部分を縫い合わせてる。

W:手間ひまかかってますね。

R:写真の部分はシルク100%になってます。

T:写真の部分だけじゃなくて、Tシャツ自体の手触りも良いですよ。

W:これは誰の写真?

R:小浪(次郎)さんです。デザイナーさんとニューヨークなので親交があるのか、次回も一緒にやるみたいです。

W:海外の雰囲気が伝わってくるよね。今の日本のファッションの流れとは違った、絶妙なモード感を取り入れたコレクションブランドかな。

T:自分の名前をお洒落にアレンジすることなく、そのままブランド名に「TANAKA」って付けてるところが好印象です。

W:現在「TANAKA」っていったらここか串カツかって感じですね。

ニューヨークから日本人が発信するブランドとして、近年人気が高まっているTANAKA。ブランドコンセプトに“今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服”を掲げ、サステナビリティにも取り組んでいる。今回紹介するTシャツは、現在NY在住の写真家・小浪次郎による写真を用いている。

TANAKA
THE TEE 左 ¥22,000、右 ¥24,200(TANAKA)
contact@tanakanytyo.com




NICENESS

レザーバッグ

“ラグジュアリーブランドのアイテムって言われても気づかないかも”(武井)

R:僕も私服で着てる好きなブランドの一つです。リリースする度にアイテムがすぐ完売するんですよ。

W:NICENESSはここ数年でよく見るようになった気がする。このバッグは新作?

R:最高級のグローブレザー(鹿革)を使用していて、定番でレザーバッグシリーズがあるんですが、その新作だと思います。NICENESSのレザーは上質なモノが多いですね。

T:たしかに、ラグジュアリーブランドのアイテムって言われても気づかないかも。

R:今って素材に妥協しないブランドが多いですけど、NICENESSがブランドをスタートしてからより増えた気がします。ちなみに金額はこのバッグで8万円です。

W:それでも完売するってすごいな。ちゃんとファンを獲得してるってことだね。

R:地方のセレクトショップでも人気があるみたいで、東京以外にも顧客がいるっていうのはブランドとして強みだと思います。

最高級グローブレザー(鹿革)を贅沢に使用したNICENESSのバッグ。底隅のマチパーツの中に隠れているジョイントを外すことで、ドローコードを入口部分で絞り、巾着型のハンドバックとしても使用できる2WAYデザイン。

NICENESS
ROGER ¥75,900(ELIGHT Inc.)
TEL:03-6712-7034




HERILL

カーディガン

“一着持ってるだけでTシャツとかの“味変”ができるから便利”(武井)

R:元々はデザイナーズブランド、某大手セレクトショップで企画をされていた、大島(裕幸)さんっていう方がやっている、素材や縫製に妥協しないブランドで、最近ジワジワと人気が出てきています。

T:たしかシースルーニットが特に人気なんですよね?

R:そうですね、元々はニットとかカシミアのアイテムが評判が良くって。

W:ウィメンズも作ってる? 女性で着てる人がいた気がしたんだけど。

R:ユニセックスで着れるのも人気の理由かもしれませんね。ただコレはシースルーなので中々上級者向けなアイテムかと。

T:けど中にグラフィックとか、色がはっきりしたものを着ると、一着持ってるだけでTシャツとかの“味変”ができるから便利っていうのも聞きました。

W:今回がたまたま薄いゲージだっただけで、他の素材のやつもあるんだよね?

R:スビンコットンを使ったり、秋冬だとカシミアを使ったものもリリースしたりしてます。

W:サイズは大きめに着た方が良さそうだね。しかし、このシースルーのニットは、内側に付いてるタグのサイズ感が微妙じゃない? 素材とデザインへのこだわりを感じるからこそ、目立つタグとか必要ないと思う。さらっと羽織りたいから、もったいないな。

R:後ろから見ると気になっちゃうかもしれませんね。

W:僕は絶対に外します。

HERILLの中でも人気のシースルーニットを用いたカーディガン。一見難しいアイテムに思われるが、Tシャツなどとの組み合わせで羽織ることで、コーディネートに幅をもたらすと愛用者が増えている。裾やリブのアレンジやシルエットも独特。

HERILL
ラミーハイゲージカーディガン ¥55,000(にしのや)
TEL:03-6434-0983

(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)



渡邊敦男(『PRODISM』編集長)

1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。

スタイリスト 来田拓也

1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。

武井幸久(HONEYEE.COM)

1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。