今週のデスティネーション・ストア| File 002
2022.11.04

HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 002 : 中三青果 (神奈川県川崎市)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を毎週紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 002は若き店主が中心となって切り盛りする、神奈川県川崎市のストリートな八百屋、「中三青果」をご紹介。




Text Yukihisa Takei
Photo Li Bowen


生真面目でストリートな八百屋

イベントプロデューサーから家業の青果店に転身

JR南武線で川崎から5駅の「向河原」。うん、用がなければなかなか来ない場所だ。この街の八百屋「中三青果」が最近ちょっと噂になっていると聞いて、お邪魔しに行った。

出迎えてくれたのは同店の戦略責任者である山田海斗さん。取材時点では25歳という若さで、八百屋というよりはアパレルスタッフのような雰囲気の人物だ。実は山田さんは、学生時代からクラブイベントなどのプロデューサーとして活躍していたが、2020年に祖父の代から続くこの青果店を継いだ。

「コロナの影響でイベントなどがまったく出来なくなってしまって、元々継ぐ考えもなかったこの家業で何が出来るか試したくなったんです。父親からも『大変だから継がなくていい』と忠告されていたんですけど(笑)」



“創業五〇年の歴史、新しい八百屋”

「中三青果店」は約50年前に山田さんの祖父が開業。以来地域密着型の八百屋として、配達と店頭小売で続いてきた。

「中三青果」のインスタグラムには、“創業五〇年の歴史、新しい八百屋”というキャッチコピーがある。確かに商店街の角にある小さな店舗は、八百屋とは思えないストリートな雰囲気。

入口の「中三青果店」の文字は、サインペインターである田辺竜太さんの手によるもの。中央にある大きなモルタルブロックの上に、旬を感じるフルーツが気持ちよく並んでいる。いわゆる“商店街の八百屋”だった店舗を、山田さんがガラリとイメージチェンンジさせた。

しかし「中三青果」の仕入れは至ってマジメだ。朝3時に山田さん自ら市場に向かい、信頼できる旬の果物や野菜を仕入れている。山田さんもクラブイベントプロデューサーだった時代から、活動時間が逆転した。

「仕入れの強みは50年の歴史ですよね。祖父の代から市場とお付き合いをしているので、経験の浅い僕の目利きでも信頼できるものを仕入れることができるんです」

13時からオープンする「中三青果」は、平日は近隣の主婦やお年寄りが常連客だが、金曜日と土曜日はオリジナルの「フルーツポンチ(¥1,300)」を目当てにした若い層が目がけてやってくる。

この「フルーツポンチ」は、旬の果物を厳選してシロップ漬けにした自家製で、季節で中身が変わるというオリジナル。「中三青果」の看板商品だ。



FRUIT OF THE LOOMともコラボレーション

旬な仕入れや味へのこだわりはもちろんだが、山田さんはそれまでの経歴で培ったセンスや人脈によって、これまでの八百屋とは違ったコミュニケーションも始めている。そのひとつが、アメリカのTシャツブランド、FRUIT OF THE LOOMとのコラボレーションTシャツ(¥5,500)。

また、そのユニークな存在感に着目したスニーカーショップのatmosから、New Balanceのイベント用にNBロゴを焼印したミカンを使用したフルーツポンチを依頼されるなど、“八百屋”の枠を超えた活動も行なっている。

「“八百屋”って、“八百万の神”なんて使われるその文字の通り、昔は“なんでもある”お店だったんですよね。だからもっとフランクに、何でもある存在になってもいいのかなと思っています。でも、外向きのイベントは攻めたことをやっても、地域に根付いていくのは“戦略”ではなく、この街にチャンネルを合わせてやっていく必要があると思っています。だからこれからも僕自身が店頭に立って、時にはポップアップのようなこともやりながら、長く続けて行きたいと考えています」



DESTINATION STORES | File 002

中三青果 | NAKASAN SEIKA

神奈川県川崎市中原区下沼部1763
営業時間 : 13:00〜19:00(日祝休)
https://www.nakasan-seikaten.com
https://www.instagram.com/nakasan_seikaten/