デスティネーション・ストア | File 018
2023.06.23

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 018 : TANAKA AOYAMA(東京都・青山)

Text Takaaki Miyake

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 018はニューヨーク発のブランド TANAKA の初となるコンセプトストア TANAKA AOYAMA。

Text Takaaki Miyake

年々、存在感を強めるTANAKA

デザイナーのタナカサヨリが手がけるニューヨークベースのブランド TANAKA が、2023年5月12日(金)に東京・表参道にショップをオープン。その噂を聞きつけ、開店から間もない5月下旬に早速その扉を開いてみた。

2017年に誕生した同ブランドは、拠点とするアメリカ国内のみならず、ヨーロッパや日本国内でも取り扱いが増えている。特に日本では2023年度の TOKYO FASHION AWARD を受賞したことを機に、その知名度やファンも着実に増やし続けている。

今回話を聞いたのは2020年の春に TANAKA へ合流し、コレクションのコンセプトやビジュアルのイメージをデザイナーと共に組み立てるなど、ブランドのクリエイティブディレクターとして活躍するクボシタアキラさん。今回の「TANAKA AOYAMA」はどういった経緯でオープンに至ったのか。

「実はたまたまこのスペースが空いていることを知ったのが、このお店のオープンのきっかけでした。表参道の交差点は都内でも有数の人のトラフィック数があります。しかしこの建物は根津美術館の向かい側。静かで落ちついたエリアなので、TANAKAの世界観に合ってると思い、もう借りるしかないなと。

ただし目的を持ったお店にしないとと思っています。この建物内の2階に偶然足を運ぶことはむずかしいですよね。ないので、せっかくなら月毎に雰囲気やコンセプトを変えつつ、面白いことをやっていければという想いから、“コンセプトストア”というアイデアが生まれました」

あくまで“実験的な直営店”として

「TANAKA AOYAMA」はマンションの一室に入居をしており、いわゆるブランドの旗艦店とは異なるが、TANAKA にとって同店が担う役割とは。

「営業は週末のみで、規模感的にも実験的なお店として僕らは捉えています。当初はアポイントメント制の営業も考えていたのですが、僕らにとってもお客様にとっても煩雑ですし、ブランドとしてフレンドリーじゃないなと思いました。なので、どなたでも予約なしで来店してもらえます」

表参道にありながらも営業は金・土・日のみという、まさに“デスティネーション・ストア”ゴコロをくすぐるスタイル。

取材時には TANAKA のルックブックの撮影も手がける、フォトグラファーの 小浪次郎 とのコラボレーションシリーズが並び、この日はオープンからすでに2回の週末営業を迎えていた。

「ここでは TANAKA のシグネチャーであるデニムアイテムを、盛夏以外の時期はフルラインナップで揃えています。それに加えてデリバリーのタイミングで、毎月または2ヶ月に1回Ready To Wearのコレクションを大幅に入れ替えていきたいと思っています。さらに同じぐらいの頻度でちょっとしたイベントの開催も考えています。夏にはフラワースタンドやかき氷など、フレンドリーなコンテンツもやっていくつもりです。

来店された方から『ここだとフルラインナップが揃っていて嬉しい』というコメントもいただきましたね。今までは卸しのみだったので、切り取り方がお店によって自ずと変わってしまうため、ブランドの世界観やコンセプトをカスタマーに直接伝えられるのは、すごくポジティブだと感じています」

モノで語るTANAKA AOYAMA

元々は古書や古絵画を販売するお店だったというこのスペース。現在の姿からおよそ想像はできないが、以前は黒の壁に赤い什器が設置され、間口も狭かったという。オープンにあたり改装を施し、自由度の高いスペースへと生まれ変わった。

「イベントの企画毎に店内のレイアウトは変えていきたいので、インテリアも決まった印象を与えないようにして、あえて作り込まないスペースに仕上げています。写真や本など、洋服以外の販売もやっていきたいと初めから決めていたので、ギャラリーのようにも活かせるプレーンな内装を意識しました。

見せたいことや表現したいことは、今後取り扱うモノで変化すると思っています。今はある程度数を絞って洋服を置いているのですが、プレオープンの際はブランドの世界観をしっかりと見せるため、フルコレクションを並べていました。TANAKA の世界観は表現の幅が広いんい、ということも見せていきたいです」

今後はクボシタさんが個人的に蒐集しているプロダクトの展示に加え、販売も考えているという。取材時には BRAUN でディレクターを長年勤めた、Dieter Rams が手がけたレコードプレイヤー​​がディスプレイされていたが、同氏が Apple の元デザイン責任者であった Jonathan Ive ​にも影響を与えたことから、初期のiPodやiPhoneが一緒に肩を並べていた。こういったことからもクボシタさんのユーモアや、プロダクトデザインに対する愛と造詣の深さを感じさせる。

「洋服以外のモノを置くことで、デザインのプロセスや哲学を表現できれば良いなと。なぜか理由は分からないですが、昔から美しいモノが好きなんです。アートやプロダクト、家具なんかも興味が湧いて、なおかつ買える場合は色々と集めているのですが、自宅にたくさんは必要ないので(笑)。それに、洋服以外のものを販売するというのはお店としても面白みが増しますよね。TANAKA というブランドの世界観をより深く体験してもらえるようにと思っています」

ファッションブランドのお店、しかもそれが表参道ともなれば、どこか敷居の高さを感じてしまう。そんなステレオタイプなイメージを壊すのがこの「TANAKA AOYAMA」かもしれない。今度の週末は少し都心の喧騒から離れて、世界へ挑戦し続ける TANAKA のコンセプトストアを覗いてみては?

DESTINATION STORES | File 018
タナカアオヤマ | TANAKA AOYAMA
東京都港区南青山6丁目1−6 パレス青山 205
営業時間 : 12:00〜20:00(金、土、日)
https://ja.tanakanytyo.com/
https://www.instagram.com/tanakanytyo/